絶望した

あまりにも絶望したのでもう少し長文になろうと思うのです.


彼らがアマチュア無線を放棄したというのは,まあ冷静に考えれば合理的な判断だと思う.
もし僕なら確実にそうしている.
そこにはもはやフロンティアはないし,フロンティアのない戦場に若者は寄り付かない.
進歩のない現場においてモノを言うのは経験で,
いくら努力しても若者はロートル*1には勝てなくて,
そんなところに若者が飛び込んだところで楽しくなれるわけがない.
まあ最初はちやほやされるかもしれないけどさ.*2


そう,アマチュア無線にはもはやフロンティアはない.
でも,世の中を見渡してみれば無線技術というのはむしろ今まさに花盛りで,
高速度通信だの,無線給電だの,どっちを向いてもフロンティアしかないんじゃないかっていうぐらい.
ただアマチュア無線だけが取り残されて,最近の若い者どもはまったく基本がなってない,なんて愚痴ってる.
いや,別に僕はそういうオールドタイプな技術を否定したいわけじゃない.


結局,彼らはアマチュアであることに拘りすぎたんだ.
アマチュアコードなんてものを額縁に飾っちゃってさ.
ここには書いてないけど,「アマチュアは金儲けをしてはいけない」ってちゃんと法律に書いてある.*3
だからこのコミュニティは,消費者にはなれても生産者にはなれなかった.
そりゃ草の根イベント的なものはあったけど,それがフロンティアになれるのは市場の草創期だけ.
もしそれ以上に大きくなろうとすれば,どこかで必ずプロフェッショナルが必要なんだ.
たとえばアマチュア無線で飯は喰えないけど,写真では飯が喰える.
写真やカメラなんてのが未だに趣味として成立し,若者が参加しつづけているのも,
もしかしたらそういう理由なのかもしれない.


今のOMたちが若者だった時代,たしかにそれはフロンティアだったんだと思う.
僕が彼らぐらいの年齢だったころ,それはPCやインターネットだった.
糞にも劣るフリーソフト作家が山のようにいた.僕もそのひとりだった.
だからたぶん,PCやインターネットなんて彼らにとってはフロンティアでもなんでもない.ただの時代の遺物だ.
もしかしたら,コミケなんてのもその時代の遺物のひとつなのかもしれない.
昔は音楽を作ったら円盤にしてコミケで売っていた.
でももしニコニコで共有でき,AppStoreで販売できるのだとしたら,
なんでわざわざ夏の盛りに東京湾の果てまでダンボールを抱えていく必要があるのだろうか.


…なんて未来学者ぶるのは自覚のないオールドタイプの典型例.
老けたね.

*1:あの業界では敬意をこめて「OM」と呼ぶ

*2:消化器内科でRFAやってる先生も似たようなこと言ってたっけ

*3:電波法施行規則第3条第1項第15号